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高木仁三郎さんを悼む−平和で持続的な未来に向かって−


死の直前まで核に警鐘を鳴らし続けた、脱原発運動のリーダー高木仁三郎(核化学者)さんを悼む

高木仁三郎さん  2000年10月8日、脱原発運動のリーダーであった高木仁三郎(62)さんが亡くなりました。高木さんは、市民のための科学を提唱し、病の中にあっても、この考えに基づく若い研究者や新しい市民運動の育成に精力的に取り組んでこられました。

 1995年9月、岩手県花巻市と同市にある宮沢賢治学会イーハトーブセンターから「イーハトーブ賞」を贈られた。授賞理由は、自然を愛し、科学を民衆のために役立てようとした賢治の思想を受け継ぎ、実践していることと、この年4月に出版した『宮澤賢治をめぐる冒険』が高く評価されました。この時高木さんは「原子力資料情報室は原発への批判勢力として社会的に認められたと思う。20年でやっと成人になったという気持ちだ」と語っておられる。

 高木さんは東大卒業後、当時最先端だった原子力産業の研究職を経て、東京都立大学理学部助教授。核化学研究者の第一人者でしたが、1973年「市民の側に立った科学を」と辞職し、1975年に原子力資料情報室の創立に参加して世話人となりました。

 近年では情報室は、原子力政策にかかわる世論形成に寄与する組織として、重要な社会的役割を果たすようになりました。それは政府や産業界から独立した、市民の出資によって支えられる団体であった事が、日本のみならず世界からもその活動・調査研究が評価されてきたのであります。

 尚、高木さんは「高木基金の構想と我が意向」という「遺言書」を残しました。
 趣旨に賛同してくださる方は、
小社までお問い合わせ下さい(E-mail)。
電話 03-5227-1917 (文元社)

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七つ森書館刊『高木仁三郎著作集』全12巻はこちら

高木基金の構想と我が意向(抄)

2000年7月10日 高木仁三郎

 私が社会的活動が不可能になる時点、及び死亡する時点以降も、私の意向が持続するために、ここに、私の代理人弁護士河合弘之氏の意向も踏まえ、現在私が、高木学校を通じて始めつつある社会的試みの目指すところをより明確にし、持続的なものとして世に残すためにこの覚書を書くことにした。

今日までの簡単な前史
 高木仁三郎としては、1975年原子力資料情報室の創設以来、個人としての市民の科学の構築・創造と同時並行的なものとして、システムとしてのそのような市民の科学を営む場としての原子力資料情報室の確立ということに大きな課題があった。今その課題が、私の病ということにやや促される側面はあったといえ、1999年9月に原子力資料情報室のNPO法人化として、一応の到達点を見たことはよろこばしい限りである。

 次の段階としては、次の目標に向かって、大胆にもう一歩を踏み出さねばならない。いやそのもう一歩は既に踏み出しているのである。それは、端緒的には高木学校の創設として、既に、1998年に始まっている。高木学校のことは、今ここで繰り返さない。この第二の目標、市民の科学のための後進の養成ということは、高木学校で部分的には実践しているが、僕はもっと実践的かつ機能的なものとして、「高木基金」の設立ということを考えてきた。

 これは一大事業であり、いずれ後の面倒を見てくれる方々にお願いすべきことも多いが、基本的な道だけは私が生きているうちに付けておかなくては意味がない。

高木仁三郎の本心
 高木の希望は、これまで、多くの人が亡くなった後でできた「記念基金」的なものを見ると、たいていが、それは、直接に本人の意向を反映したものではなく、まわりの人が、本人の思い出のために行なう事業であり、当初集まった金は一定あっても1O年も経てば、資金繰りに苦労するようになる。そうかといって、「個人の偉業の記念」的な色彩が強いから、大新聞社のようなスポンサーがつかない限り、それ以上永続化するのは無理である。

 私の構想はこれらと違う。私には、「生前の偉業」と呼ぶほどのものはないが、死後も世間を騒がす程度に長期的視野に立った事業、特にNPOの発展への具体的、実践的、現実主義的意図に関しては、「えらい先生方」にはない行動力があるつもりで、それが今日の私を私たらしめてきたものである。その線を、死に際しても貫くことで、私らしい生涯を貫徹できるのではないかと思う。後で仕事を担う人には、ご苦労な話であるが、私の最後のわがままとして許されたい。

高木仁三郎市民科学基金(略称:高木基金)設立への呼びかけ

 2000年10月8日、脱原発運動のリーダーであった高木仁三郎さんが亡くなりました。高木さんは、脱原発運動を知的かつ粘り強く進めるとともに、市民のための科学を提唱し、病の中にあっても、この考えに基づく若い研究者や新しい市民運動の育成に精力的に取り組んでこられました。高木さんが亡くなったことによる損失の大きさは計り知れないものがあります。しかし、残された私たちにはいつまでも嘆き悲しんでいることは許されません。高木さんの掲げたこの高い志と、業績を引き継ぎ、発展させなければなりません。高木さんはそのことについて別紙(上記)の「高木基金の構想と我が意向」という「遺言書」を残しました。
その要旨は、
@ 自分の全財産(約2000万円)を第1のファンドにしてほしい。
A 自分の葬儀はごく身内だけのものとし、そのかわり「偲ぶ会」を開き、参加者に呼びかけて高木基金への寄付をお願いして、第2のファンドとしてほしい。
B 基金の目的は次のとおりとする。
  (1)市民の科学を目指す研究者個人の資金面での奨励と育成
  (2)市民の科学を目指すNPO(NGO)の資金面での奨励と育成
  (3)アジアの若手研究者の育成
C 助成金を受ける人・団体を選定するための「運営委員会」を上記意図の理解者により構成して欲しい。

 私たちは、この高木仁三郎さんの構想を全面的に受け入れて高木基金を設立したいと思います。
 2000年12月10日の日比谷公会堂における「高木仁三郎さんを偲ぶ会−平和で持続的な未来に向かって−」では多くのご寄付を頂き有り難うございました。

 なお、この高木基金と原子力資料情報室は別個の団体とし、その運営にあたる理事なども重複しないようにします。高木学校や原子力資料情報室は、市民の科学をめざすNPOの一つとして、助成を受ける候補という位置付けになります。

2000年12月11日  高木基金設立委員会
代表:河合弘之
委員:堺 信幸、司波総子、マイケル・シュナイダー、高木久仁子、中下裕子、飯田哲也


 偲ぶ会にご参加いただけなかった方は、下記口座へ寄付を振り込んでいただくこともできますので、ご協力をお願いいたします。
高木基金の郵便振替口座
口座番号 00140-6-603393
加入者名 河合弘之高木基金口
(タイプミスでなくこの通りです)

高木基金の銀行口座
あさひ銀行市ケ谷支店 普通預金 1221981
口座名義 高木基金代表河合弘之

※恐縮ですが、銀行口座へお振込みいただく際は、お名前とご住所を別途ご連絡ください。

【連絡先】〒160−0004
東京都新宿区四谷1−21 戸田ビル4F 高木基金設立委員会

高木仁三郎略歴

高木仁三郎(たかぎ じんざぶろう)
1938年 群馬県生まれ。核化学者。
1961年 東京大学理学部化学科卒。日本原子力事業NAIG総合研究所,東京大学原子核研究所助手,東京都立大学助教授,マックス・プランク研究所研究員等を経て,原子力資料情報室代表になる。理学博士(原子核化学),多田謡子反権力人権賞受賞(1992年度)
日本の原子力間題に関して、科学者の立場から、その危険性、問題点を指摘。日本の反原発運動の指導的立場にあった。
2000年10月8日 死去

著 書 『プルートーンの火』(教養文庫),『科学は変わる』(教養文庫),『危機の科学』(朝日選書),『元素の小事典』(岩波ジュニア新書),『わが内なるエコロジー』(農山漁村文化協会),『核時代を生きる』(現代新書),『いま自然をどう見るか』(白水社),『森と里の思想』(対論/前田俊彦・七つ森書館),『チェルノブイリ――最後の警告』(七つ森書館),『あきらめから希望へ』(対論/花崎皋平・七つ森書館),『巨大事件の時代』(弘文堂),『食卓にあがった死の灰』(共著・現代新書),『核燃料サイクル施設批判』(七つ森書館),『核の世紀末』(農山漁村文化協会),『マリー・キュリーが考えたこと』(岩波ジュニア新書),『プルトニウムの未来一2041年からのメッセージ』(岩波新書)など。



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高木仁三郎著『宮澤賢治をめぐる冒険』水や光や風のエコロジー
高木仁三郎編『プルトニウムを問う』国際プルトニウム会議・全記録
三輪妙子・大沢統子編著『原発をとめる女たち』ネットワークの現場から
マーク・スティーブンズ著・渕脇耕一訳『スリーマイル・パニック』核時代最悪のシナリオ

《現代教養文庫》
高木仁三郎著『科学は変わる』巨大科学への批判
G・ボイル著 高木仁三郎・近藤和子訳『太陽とともに』自然と共存する技術
立松和平編『天の穴、地の穴 野間宏生命対話』
R・ユンク著・山口祐弘訳『原子力帝国』
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