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◆神楽坂上だより

神楽坂上だより(ゼロ号)

 「その時(1923年9月1日11時58分)のさまがはっきりと私の眼の前に浮んで来た。  私達は中庭に面した八畳の一室で、昼飯をすまして――少なくとも私と私の長男と次男とだけはすまして、何か頻りに話をしていた。(中略)そこにゴオという音が南の方から響いて来たのである。
 と、いつも地震などそんなにこわがらない長男が、ぐらぐらと来ると同時に、『オッ! 地震』と叫んで、立ち上がるより早く、一目散に戸外に飛び出した。弟も妹も母親もすぐそれにつづいた。私は少時(しばらく)じっとして様子を見ていたが、いつもと違って、非常に大きいらしいのに、慌てて皆のあとを追って飛び出して行った。
 それは何とも言われない光景であった。あたりはしんとした。世界の終りでもなければ容易に見られまいと思われるような寂寞(せきばく)が、沈黙が一時あたりを領した。誰も何も言うものはなかった。声を出すものもなかった。唯、内から人の遁(に)げ出す気勢(けはい)ばかりがあたりに満ちた」
 これは、田山花袋が 『東京震災記』に記した被災直後の情景ですが、誰もが、時が止まったような一瞬を感じたようです。
 同書の解説で小林一郎氏は、「そして、(罹災の実情をつぶさに観察し描写した)花袋は、『廃墟』の中から『新しい芽』が萌え出る、つまり『再生』という考えを打ち出すのであり、『自然』の本質、在り方を厳粛に受けとめるべき」ことを強調して、破壊するのも再生するのもまたこの自然の力をどう受けとめるかにかかっていると見ているのではないか、と読み解かれています。

 弊社では、この大きな転換期において、引き続き本書のように残すべき本の継承に努めて、この「再生」への道に取り組んでまいります。
なお、教養ワイドコレクションの第二期を準備中ですので、ご期待ください。

2011年4月25日

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