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社会思想社刊
『戦闘的自由主義者 河合榮治郎』
 松井慎一郎 著
『戦闘的自由主義者 河合榮治郎』カバー
新進の研究者・松井慎一郎が呈示する新たな河合榮治郎像!
凜乎とした生涯を裏付けた「教養」の再評価
 本書は、河合榮治郎研究会での活動を通じて得た新史料・情報や示唆に基づき、河合の思想と行動を全面的に扱い、その全体像を明確にすることを意図したものである。具体的には、
(一)これまで詳しく論じられてこなかった一九一〇、二〇年代の思想形成期および若き官僚・研究者時代に関する詳細な分析を行う、
(二)T・H・グリーン以外の社会思想との関係についても触れる、
(三)三〇年代のマルクス主義・ファシズム批判を展開した自由主義者としての言説をイデオロギー的に裁断するのではなく、その時代背景を踏まえながら分析し、できるだけ真意を汲み取る、
(四)思想家としての真価が問われる戦時体制下の言動についても詳しく触れる、などの研究方法を通じて、「戦闘的自由主義者」の実像に迫りたい。
四六判上製 280頁 本体価格2800円
ISBN4-390-60438-4 2001年2月発行


河合榮治郎研究会編『教養の思想』はこちらへ
『河合榮治郎全集』全24巻はこちらへ
現代教養文庫『新版 学生に与う』河合榮治郎 著はこちらへ

戦闘的目由主義者 河合榮治郎  ● 目次

 凡例

序章
    今、なぜ河合榮治郎か
    従来の河合研究と本書の視角

1章 理想主義者としての思想形成
    河合入学以前の第一高等学校
    「ニトベ宗」の一員として
    科学への志向
    労働問題への関心

2章 大正期進歩的官僚の思想と行動
    河合と工場法
    臨時産業調査局での仕事
    アメリカ留学
    労働問題研究

3章 教育者としての出発
    社会思想史研究
    イギリス留学

4章 自由主義の旗幟
    T・H・グリーン研究
    大学自由論
    学生思想問題調査委員会

5章 「非常時」への対応
    『社会政策原理』の発刊
    「満洲事変」に際して
    二度目のヨーロッパ留学
    ファシズム批判
    反ファシズム勢力結集への試み
    社会大衆党への期待

6章 日中戦争をめぐって
    日中戦争に至るまでの言説
    「日支問題論」の要旨
    河合の日中戦争論の本質

7章 戦時体制下の「戦闘的白由主義者」
    大学自治擁護の闘い
    河合事件
    最後の闘い、裁判闘争

終章

索引
あとがき
 …… 新たな理念・哲学を見い出せず、社会がますます混迷の度を深める今日、河合榮治郎の生涯と思想を考察していくことの意義は決して小さくないだろう。個人が主体的に物事を考察し、自身の責任において行動するための訓練の乏しい日本社会にあって、情況や感情に流されることなく、自らの理性と信念に則り「唯一筋の道」を貫いた河合の人生は、当時にあっても出色なものであった。その自由主義思想は、単に各個人の自由に任せるといった類の「理念なき自由主義」ではなく、確固たる理想主義・人格主義的人生観に裏付けられた体系的なものであった。

 河合の人生を振り返る時、青年期の思想形成がその後の人生を大きく規定していたことがわかる。それは、良き師、良き友、良き書に恵まれることがいかに大切であるかを示す好例でもある。昨今、学級崩壊や学力低下等の教育問題解決策として、弥縫的な制度改革の提案ばかり目立つが、こうした教育の原点に立ち戻って抜本的な改革を考察する必要があろう。新渡戸稲造や内村鑑三らの影響下に育まれた「教養主義」は、単に読書や芸術鑑賞等を通じて知識の集積をはかるといったものではなく、それらの行為を通じて、自己の内面的精神的世界を成長・発展させようとするものであり、まさしく「人生における戦ひ」「心の中の戦ひ」(『学生に与ふ』)であった。各人における「人格の成長」を人生の最高目的とする理想主義・人格主義の観点からすれば、「教養」こそ人生における最も崇高な行為となる。そこには、他者との差異化をはかったり、上昇志向を補完するための手段としての学問・知識は存在しない。……
装幀・須田幸太郎

著者略歴
松井 慎一郎(まつい しんいちろう)
1967年 群馬県高崎市生まれ
1990年 同志社大学文学部文化学科文化史学専攻卒
1994年 早稲田大学大学院文学研究科修士課程史学(日本史)専攻修了
現 在 早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程史学専攻
    早稲田大学本庄高等学院非常勤講師
専 攻 日本近代思想史
主要論文 「土田杏村の『文化主義』―理想主義と社会主義の調和に向けて」(『民衆史研究』97・5号)「思想形成期の土田杏村―文明批評家としての前提」(『越佐研究』98・5号)「鶴見祐輔と河合榮治郎―交友三十三年」(『早稲田大学大学院文学研究科紀要』99・2号)

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